
春のヨーロッパ遠征、一か国目は中欧、スロバキア共和国から始まった。目的地は首都ブラチスラバ。チェコスロバキア時代から走り続けてきた路面電車を記録するためだ。
ČKDタトラ社が生み出した路面電車「タトラカー」は、かつて東欧諸国の都市交通の主力として活躍してきた。ここブラチスラバでも例外ではなく、70年以上に渡って市民の足として走っている。だが時代の波には逆らえず、新型低床車両の導入が進むにつれ、タトラたちは次々と姿を消しつつある。全廃の足音が聞こえてきた今、この街に残されたタトラカーの記録を残すべく、ブラチスラバにやってきた。
到着したのは日曜日。ブラチスラバのタトラカーは平日のみの運行とされているが、この日は市内交通を祝う特別イベントが開催されており、動態保存されている旧型トラムたちが臨時運行していた。

38号電車と135号トレーラーの編成
角ばった車体が時代を感じさせる、50年代のクラシックトラム。

タトラT2(215号)
アメリカのPCCカーを思わせるフロントが特徴の一台。屋根上には共産主義の赤い星が輝いている。

みんな大好きタトラT3無印(275号)
T3の中でも製造初期のグループに属し、バンパーや飾り帯、ウインカーなどがオリジナルの姿に復元されていてカワイイでちゅね!
この日は特別ダイヤとして以上の3編成が臨時運行。かつてのブラチスラバの風景をよみがえらせてくれた。


観光客で賑わうブラチスラバ城の真下には、トラム専用の長いトンネル区間が存在する。電車以外の通行は禁止だが、入り口近くの歩道から望遠レンズで狙えば、まるでメトロトラムのような一枚を撮ることができる。


シュコダ9Tr(53号)
この日のトラムだけでなく様々なトロリーバスの保存車も運行されていた。写真は81年製のトロリーバス。共産圏らしい無骨なデザインがたまらない。
翌日は平日ダイヤ。この日は一般運用で走る現役タトラカーを追うことにした。
現在、ブラチスラバで運行されているタトラカーはT3とT6A5の2形式。どちらも平日のみ、特定の系統に限って運行されている。まずは朝夕ラッシュ時のみ動く7系統から狙うことにした。

ブラチスラバ名物、共産カラーのタトラT6A5。
T6A5はT3の後継として1980年代に導入されたチョッパ制御の車両だが、その構造ゆえに多くの都市ではT3よりも早く退役してしまった。しかしブラチスラバでは比較的多くが生き残っており、赤とクリームの原色カラーは他の都市では見られない希少な存在となっている。




Peknácesta停留所近くでカメラを構えると、次々とT6A5が、時折T3もやってきた。塗装もバリエーション豊かで共産色、更新色、さらには名鉄色などなど、様々な車両が走っていた。
7系統を一通り撮影した後は4系統へ

4系統にはブラチスラバに残る最後のタトラT3が集結している。近年は名鉄色への塗り替えが急速に進み、9割以上のT3が新塗装化されていた。

そんな中、ようやく出会えた原色(風)塗装のタトラT3 7717号。やはりT3はこの色でなくっちゃ。
一見すると往年のT3だが、実はこの車両、2007年に新造された車体に、廃車となったT3の走行装置を組み合わせて製造させた最新のT3である。21世紀に入ってなお、60年前と同じデザインを再現するその姿勢に、タトラへの深い愛を感じずにはいられない。




これにて、ブラチスラバでの撮影は終了。原色のタトラカーがギリギリ残っているこのタイミングで、なんとか記録に収めることができたのは本当に幸運だった。
ブラチスラヴァ タトラカー撮影のポイント
- 保存車はイベント時のみ運行(年に数日程度)
- タトラT3・T6A5は平日のみ運行
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- 4系統:終日運行(新旧車両が交互に運行)
- 7系統:朝夕運行(全列車タトラ)
- 9系統 : 極稀にT6A5が運行
- タトラK2Sは1,4系統(土日も僅かに運用アリ)
- 大半の列車はシュコダ製の低床電車に置き換え済み
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シュコダ30T