カンボジアを走るキハ183系

2025年1月撮影



2023年3月にラストランを迎えたJR北海道の特急車両キハ183系。引退後、一部の車両は遠く海を越えアフリカへ、また一部の車両は東南アジアの地で活躍しているという。

北海道でそのラストランを見届けた身としては、異国で再び動く姿をぜひ自分の目で見たい——。そんな思いから、年末年始はカンボジアへ渡航することにした。

 



カンボジア・ロイヤル鉄道 キハ183系について

輸出されたキハ183系は、後期型であるN183系・NN183系グループから11両(先頭車5両・中間車6両)。いずれもプノンペン駅に配置されている。

2024年1月現在の配置表
2024年1月現在の配置表

 

 

基本的に【キハ183+キハ182+キロ182+キハ183】の4両編成で運用されており、定期的に編成の組み替えが行われていた。

 

なお、中間車のうちキハ182-7561は唯一、車両の向きが逆転しているため、編成に組み込まれると青帯の向きが揃わないという特徴がある。

また、キハ183-4558には北海道時代では滅多に見られなかった貫通幌が装着されている。※2025年8月追記:4558号は貫通幌が外されて、幌枠に変わったようです。

 

 

キハ183系の運用について


毎週金・土・日曜日に南線プノンペン〜シアヌークビルの列車(7D/8D)で運用されている。

繁忙期は他の曜日でも運転する場合があり、訪問した年末年始には南線で毎日運転されていた。

 

7D   南線 時刻表   8D
7:00 Phnom Penh = 20:00
7:15 Wat Tang Krasiang 19:45
7:20

Wat Tra Pang Chhouk 19:40
7:25 Kantaok 19:35
7:30 Phleung Chheh Reteh 19:30
7:40 Prateah Lang 19:20
8:20 Komareachea 18:40
8:40 Takeo 18:00
9:30 Tani 17:20
10:00 Touk Meas 16:50
10:10 Kompong Trach 16:40
10:20 Kep 16:20
10:40 Kampot 16:00
12:00 Veal Reng 15:00
12:40 = Sihanouk Ville 14:00
※月〜木曜はAS1000等、金〜日はキハ183系が充当される。
 
チケット案内

各駅の窓口またはインターネットで購入可能。

オンラインでの予約は以下の公式代理店を利用:

  • マレーシアの旅行サイト「Easybook」
  • カンボジア鉄道の公式サイト「Royal Railway Easybook」

※オンラインでの支払方法はPayPalのみ。「Royal Railway Easybook」はPayPalのアカウント名が日本語の場合、決済エラーが出ることがあるので、その場合は「Easybook」経由が確実。

 


2024年12月31日

カンボジア滞在初日、朝6時半のプノンペン駅を訪れた。


この日の南線はキハ183系だけが走ると思い込んでいたのだが、ホームに立つと予想外の光景が広がっていた。キハ183系だけでなく、運用機会が少ないドイツ製旧型ディーゼルカーまでもがエンジンをかけて待機していたのである。

駅員氏に尋ねると大晦日限定の特別列車として走るとのこと。思いがけない情報に、駅での撮影予定を急遽変更し、沿線で撮影することに。


しかし、順光で撮影できる郊外まで配車アプリで移動するにしても、治安面の不安と帰りの足が確保できない可能性が頭をよぎった。そこで、駅前にいたオートリキシャ(三輪タクシー)の運転士に交渉を持ちかけた。

ぼく

「チャーター!トゥーアワーズ!20ドラーズ?(オタク特有の早口)」

リキシャの運転士

「???」

そんなガバガバ即席交渉にも快く応じてくれたリキシャのお兄さんと共に撮影地へ向かい、列車が来るまでリキシャ内で待機出来ることになった。

 

 

Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183



郊外の直線区間にリキシャを停めてカメラを構える。

最初にやってきた列車はシアヌクービル行きキハ183系。ヘッドマークあり&中間車の向きが揃っているアタリ編成が来てくれた。黒いスカートが精悍な印象で、北海道時代とはまた違った魅力を感じる。

 

 

 

Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183



乗ってきたオートリキシャーと共に撮影。

これを撮影するために一番かっこいいリキシャ(丸目・広告なし・インド製)を選んで乗車したのである。
リキシャを停める位置や角度まで指定する面倒なオタク仕草にも快く付き合ってくれた運転士に感謝。

撮影中にリキシャの運転士がいなくなったと思っていたら、近くの商店で水とコーラを買ってきてくれた。本当にありがたい。

 

Royal Railways Cambodia Train10 ZZ800
Royal Railways Cambodia Train10 ZZ800



キハ183系通過の15分後、JR北海道色を纏ったポルポト気動車がやってきた。大晦日限定の多客臨時列車である。

ドイツ・デュワグ製ZZ800型で、共産党時代にはポルポト専用車としても使われていた車両だという。最後部にはバイクを積み込む電源貨車が連結されていて、気動車・貨車共にキハ183系カラーに塗り直されているのが面白い。


これにて本日の沿線撮影は終了。
リキシャーでプノンペン駅まで戻り、運転士には20ドル+親切にしてくれたチップとして5ドル払って解散となった。

 

 

撮影地 : 南線 𝖪𝖺𝗇𝗍𝖺𝗈𝗄 - 𝖯𝗁𝗅𝖾𝗎𝗇𝗀 𝖢𝗁𝖾𝗁 𝖱𝖾𝗍𝖾𝗁

𝖦𝗈𝗈𝗀𝗅𝖾 𝖬𝖺𝗉 : 11.515352, 104.796092

プノンペン駅からタクシー2時間のチャーターで往復可能

 

 




2025年1月1日

この日はシアヌクービル行き列車に乗車!

朝6時半にプノンペン駅へ向かうと昨日とは違う編成が出発準備をしていた。
上り方先頭車は北海道では滅多に見られなかった貫通幌付き。やはり幌があると引き締まって見えてかっこいい。

1827561 1827553 1834559
元グリーン車

元GU指定席

オリジナル席


車内も北海道時代のままで、同じ普通車の中にもグレードアップ指定席と183系オリジナル席で座席格差があるのも当時のまま。
セカンドクラスは自由席だったため、迷わず最前部の前面展望席へ。最前席は職員専用という噂もあったが、この日は自由に座ってよいとのこと。



プノンペンを出発してから約4時間、目的地のカンポット駅に到着した。
ここまで乗ってきた列車を先回りして沿線撮影するため、急いで下車し駅にいたタクシーに飛び乗って順光になりそうな線路側へ!

 

 

Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183


石北本線(みたいな風景)を走るキハ183系。
列車はカンポット駅にしばらく停車していたお陰でギリギリ先回りする事が出来た。

貫通幌付きの最後尾車両に対して、先頭車は貫通幌無し&幌枠無しのすっぴん車両。上部のライトユニット周りも黒く塗られていて精悍な顔つきでした。

 

 

撮影地 : 南線 𝖪𝖺𝗆𝗉𝗈𝗍 - 𝖵𝖾𝖺𝗅 𝖱𝖾𝗇𝗁 

𝖦𝗈𝗈𝗀𝗅𝖾 𝖬𝖺𝗉 : 10.6217745, 104.1755661

駅に集まっている車に値段交渉せずに乗車し、下車時に2USドル渡したら没問題だったので参考までに

 

 

 

Royal Railways Cambodia YDM-4 6575
Royal Railways Cambodia YDM-4 6575



夜のカンポット駅を通過する海コン貨物列車。

カンボジアは貨物列車があまり走っていないのかと思いきや夜間にかなりの本数が走っていた。唯一の国際港湾であるシアヌークビル港と首都を結ぶ路線なだけあってコンテナ輸送が盛んなのだろう。

機関車はインドのメーターゲージ路線で使われているYDM-4型。エキゾチックな塗装も相まって中々にかっこいい車両だった。







2025年1月2日

この日はカンポットを散策しながら撮り鉄することに。
カンポットはバックパッカーが沈没しやすい街として有名な場所で、シーフードが美味しくてのんびりとした空気が流れる田舎町。体感的な治安もプノンペンより明らかに良かったので、1泊だけする予定を延長して3日間滞在することにした。


Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183


プノンペンから来たシアヌクービル行きを山バックで俯瞰した。まるで石北線遠軽の瞰望岩のような風景で懐かしい。

撮影地はカンポットにあるホテル「Montagne Boutique」の客室内ベランダ。マウンテンビュールームという名前で売られているが、鉄オタにとっては最高のトレインビュールームだった。
車両に電線がかからないダブルルームの415号室がオススメ。予約時にデンシャが見たいから最上階の一番線路に近い部屋にしたいとリクエストを送りましょう。



Royal Railways Cambodia Train08 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train08 KIHA183


復路はカンポットの有名観光地 カンポット鉄道橋で狙った。
カンボジアには崩落の危険がある鉄道橋が複数あるらしく、この橋もその一つだという。実際に見てみるとあちこちが朽ち果てていて歩道部分は底が抜けている個所があちこちに見受けられた。






2025年1月3日

カンポット滞在最終日。
昨日までは夜しか走っていなかった貨物列車が日中帯にも何本か走っていた。

Royal Railways Cambodia BB-1011
Royal Railways Cambodia BB-1011
Royal Railways Cambodia YDM-4 6640
Royal Railways Cambodia YDM-4 6640


カンポットで3日間滞在した体感としては、南線の貨物列車は列車交換を極力避けるためか同じ方向の列車を続行して運転している傾向があるように思う。
この日も夜間に下り列車が数本連続して走っていて、日中は上り列車が3連続で通過していた。



Royal Railways Cambodia Train08 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train08 KIHA183



カンポットからプノンペン行きのキハ183系に乗車。帰りはファーストクラスに課金して元グリーン車を堪能した。


2日前に乗車したシアヌークビル行きでは途中タケオとケップ以外の小駅はすべて通過していたのに対し、この日のプノンペン行きは各駅停車で冒頭の時刻表の通りに運行していた。オンラインで切符を買えない小さな駅でも客扱いをしていたのだが、停車パターンについての情報はどこにも掲示されていなかったので詳細は分からず。

 

 




2025年1月4日

この日はプノンペン駅付近の線路が賑やかになっているエリアで撮影をすることに。
生活感が濃い場所で治安が良いのか悪いのか不安でしたが、沿線に住む見知らぬオジサンが椅子とパラソルを用意してくれて快適に待機することが出来た。


Royal Railways Cambodia Train01 RHN
Royal Railways Cambodia Train01 RHN
Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183



生活感溢れる線路をキハが走る。せっかく海外に来たのだからこういう異国感に満ちた場所で撮影するのが一番楽しかった。
ただし、この周辺の野良犬は直前まで大人しかったのに突然ブチギレて追いかけてくるタイプが多いので長居は禁物。



撮影地 : 南線 𝖯𝗁𝗇𝗈𝗆 𝖯𝖾𝗇𝗁駅周辺

𝖦𝗈𝗈𝗀𝗅𝖾 𝖬𝖺𝗉 : 11.572168, 104.904445

 

 

 

 



日中はプノンペン駅周辺を散策しながら入換車両や近郊列車を撮影した。

定期列車は朝夕2本しか走っていないのだが、昼間は貨物列車の入換で機関車が行き来している上、土日には北線Somrong駅までの近郊列車が6往復設定されている(乗客がいなければ運休らしく2往復しか走らず)

また、キハ183系も日中帯に試運転や整備作業を行っていたので飽きることなく過ごすことが出来た。




Royal Railways Cambodia Train08 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train08 KIHA183


夜のプノンペン市街地を走るキハ183系。
この時間に沿線に出るのは流石に怖かったのでホテルの上から俯瞰で狙う。線路のすぐ脇にも家屋が並んでいるお陰で夜間でも明るく撮影する事が出来た。





2025年1月5日

今日はカンボジア滞在最終日
まずは朝の北線バッタンバン行きを俯瞰した。

Royal Railways Cambodia Train01 RHN
Royal Railways Cambodia Train01 RHN


プノンペン駅を発車する北線バッタンバン行き。発展著しいプノンペンだが、線路周辺は開発されていないエリアが広がっている。

続行で発車する南線シアヌークビル行きはキハ183系で唯一の貫通幌付き車両が充当されそうだったので、タクシーを呼んで花咲線(みたいな景色の区間)へ急行した。



Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183
Royal Railways Cambodia Train07 KIHA183


1両だけ貫通幌を装着したままのキハ183ー4558
JR北海道時代も極稀に幌付きで運用に就くことがあったものの撮影は叶わず。まさかカンボジアの地で遭遇出来るとは思わず……、大変おブイでした。

これにてカンボジア遠征は終了。
撮影後は上機嫌でプノンペンのカジノへ向かった結果、一瞬にして150USドルを失ってしまうのであった……。