フランス北東部、ドイツとの国境に接するアルザス地方。ここには、フランスでも珍しくなった客車普通列車が健在だった。TER Grand Estが運行するこの列車は、RRR(Rame Réversible Régionale)と呼ばれるステンレス製の低床客車。かつてはフランス各地で走っていたものだが、今ではこの地域だけで細々と運用されている、貴重な車両である。
非電化路線を走る客車普通列車を撮影。大変渋い塗装の旧型ディーゼル機関車BB67400型がやってきて激ブイでした。DL牽引の客車列車は平日のラッシュ時に限って運行されている。ただし、同じ列車でも日によって気動車だったり客車だったりと、かなり不規則な運用だった。
堂々6連でストラスブールへ向かう朝の輸送力列車。この日はポイント故障で大幅遅延していたため、本来なら撮れない順光時間帯での撮影が叶った。
午後はパリとストラスブールを結ぶ電化幹線へ。
ラッシュ時のみ客車が走る非電化区間に対して、電化区間では終日に渡って客車列車が運行される。快速列車ではかつての特急型であるCorail客車、普通列車ではRRR客車がゲンコツと呼ばれる機関車に牽引されて走る。電車化・気動車化が進むフランスにおいて、これほど客車列車が集中する路線はかなり珍しいはず。
続いて、シャンパーニュ地方の主要都市ランスへ。
フランス国鉄の伝説的な電気機関車であるCC40110型、通称「初代ゲンコツ」を狙った。かつて国鉄のフラッグシップ機として特急TEEを牽引し、1996年に引退した名機である。この日は動態保存車がパリ東〜ランス間の特別列車を牽引した。
復活を果たしたCC40110。
撮影後はランス駅で停車中のゲンコツを舐め回した。
これぞゲンコツ。存在感が桁違い。デザインの美しさは世界レベル。
「ゲンコツ」という名前の由来となったΣ型の前面形状。CC40110型から始まったこの前面形状は、後にフランス国鉄の機関車デザインに広く採用され、さらには日本の千葉県を走る私鉄電車にも影響を与えるほど、鉄道デザイン史に残る名作である。

CC40110型が牽引するクラシック客車たち。TEE用の特急型ステンレス客車、戦前製の郵便車など、TGV開業前の在来線黄金時代を支えた名車たちが、再び蘇った瞬間だった。